第23話 洞戸の円空

物語というものは作者の意図とは異なって進んでいくものです。
とんぼと円空を合わせるつもりが、とんぼは全然違う方向へ旅立ってしまいました。

さて第1章のあとがきの中でも触れたのですが、第1章が父と子の物語を一つのキーとしたのに対して
第2章は母と子の物語をキーにするつもりです。
今回の話はその象徴的な話の一つでもあります。

化け猫であることが村人に知られた碁魔は一人家を出てそれ以来、夫にも息子にも会っていない。
しかし、彼女が手にした地獄耳の能力はどこにいても息子の声を耳に運ぶ。
(ちなみに息子の魅佐碁はスピンオフストーリー1に主人公として登場しています。

子猿の聞旦は体をはって母を守り、母の身代わりにその顔を奪われた。しかし顔のなくなった子供を自分の子と認識できない母猿は聞旦を見て驚き、逃げ出してしまう。

そうして円空。
彼は江戸時代初期の仏師、一生のうちで12万体もの仏像を彫った。子供が風を引けば、村人はお寺に円空の彫った仏像を借り受けに行き、病気が治ると寺に返しに行く。民衆の中で生き、民衆に愛された偉いお坊さんだ。彼自身、幼い時に長良川の洪水により母親を亡くし、その後仏門に入った。
彼が自らの最期の時を悟り入定したのは母親の命を奪った長良川のほとりである。
洞戸に残る母と自らを彫ったのではないかと思われる3体一対の仏像は見ているだけで涙を誘う。
(詳しくは下書きコンテンツ円空の旅にて)

第2章を隠しテーマとして母子編にしようと思ったのは2015年11月の円空に旅がその大きなきっかけである。
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