第1話 二本槍の士刃双樹
(しばそうじゅ)
3月20日、春分の日。
これまで水底に身を潜めていた龍はこの日、空へ駆け昇ります。

春は期待とはじまりの季節です。
春の訪れは佐保姫という美しい女神によってもたらされます。
彼女に誘われて草木は芽吹き、花は匂い立ちます。
田の畔にはうずらが行列を作り、一斉に鳴き始めます。
やっぱり物語の初めは春がいいです。
明るい気持ちになります。

田には一本の”考えるカカシ”。
(”人は考える葦(アシ)である”って言ったのはパスカルさんです。)
彼は春の気配を感じ、自然の愛おしさを感じていました。
このカカシがこの物語の主人公です。
まだ名前はありません。

この物語では4人の主要登場人物を予定しています。
それぞれに日本の四季、春・夏・秋・冬の属性を当てはめてみています。(5人目として梅雨も想定してるけれどね。)

このカカシの属性は秋。
カカシ・・・っていうとやっぱりイメージは秋。収穫シーズンにカカシは鳥から作物を守ります。ワラでできてるってのもやっぱり枯草の秋のイメージだと思う。
マンガの主人公というと前向きで明るい春タイプか、勢いで突っ走る夏タイプが大道ではないかと思うけれど、どうしてもカカシを主人公にした話を書いてみたかった。
ルパン三世に例えるなら、次元や五右衛門を主役にするようなものかもしれないけどね。
すると必然的にこの作品には秋色が全体的に影響を与えるかもしれない。
でも物語の中で、秋ならではの「味わい」「美しさ」「もののあはれ」なんてものをも表現できたらいいなっと思っています。

主人公には旅をさせたい。
色んな里、人、色彩に出会い、多くのことを感じてほしい。風来坊、スナフキン、種田山頭火、芭蕉・・・そんなイメージを少しかぶらせてみています。

第1話の舞台は尾張(おわり)の山里。
つまり、オワリから始まる物語ってわけです。
この物語の設定も実は一つの物語が終わったところから始まっています。
そして尾張は現代の愛知県。
”愛を知る”と書いて愛知県。
実はこの愛を知るってのがこの物語のテーマでもあります。
ま、それはまたおいおいと。

春は東風、夏は南風、秋は西風、冬は北風。
四季を感じる風。
春の風は暖かくやわらかい。
東から吹く風に揺られるように物語は始まります。
 
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